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銀河幻風ハクレイガー・成敗4「憎悪の月」
時は2000と200年、幻想郷に罪の嵐が吹き荒れた!
どっちもこっちもあっちもそっちも見るに耐えない無法妖怪(もの)!
今こそ出番だGJ9、銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切る!




その日は幻想郷では珍しい熱帯夜だった。尤も、博麗神社の中は、ハクレイガーとシンクロして出来た空調設備が完璧に動いていたため、大して暑くもなかったのだが。
そしてその日は満月だった。GJ9のメンバーが、すやすやと眠りについた頃、咲夜も眠りについていた。
……彼女は静かに夢を見ていた。咲夜にとって懐かしい夢だ。

「お嬢様、紅茶が出来ました」
「咲夜、上出来ね」
在りし日の紅魔館。幼き姿を残す館の主、レミリア=スカーレットと十六夜咲夜が、満月を見ながら瀟洒にティータイムと言ったところか。
200年前の幻想郷。まだ、ヒソウテンソクがなかった頃。まだ、幻想郷があんな事になるとは誰も想像できていなかった時代。咲夜は、この小さなカリスマに仕える日々を送っていた。
時々、霊夢や魔理沙、アリスと言った面々がそれぞれの目的を持って、館に遊びに来るが、咲夜も彼女らに対して、それぞれの対応でもてなしていた。今は、そんな他愛もない日々すら懐かしい。
『お嬢様……私は、なんと言う夢を』
夢の中で咲夜は、在りし日の彼女すらも見つめる「第三者」になっていた。その存在は誰からも認知されていない。当主からも、自分からさえも。
あの時起きた、だいたいの異変は皆、他愛もない異変であり、たいていの事は霊夢や魔理沙が、自分が動く前に解決していたものだ。と、咲夜は夢ながらにして思った。
と、そこに突然、あの忌まわしき日々のフラッシュバックが挿入される。
「お嬢様、ここは危険です。ヒソウテンソクを持ち合わせていないこちらは不利、どうかご決断を」
「咲夜。コネクションの時代はあと何百年も続くでしょう」
「はっ……?」
「私は出遅れてしまったわ」
「出遅れたなどと……」
今改めて思い出す。レミリアの傍には、静かに眠りについているフランドールの姿もあった。
咲夜が出撃した瞬間、目の前で美鈴がいなくなった事も。メイド妖精の数がこの日の数日前に次々とやめていった
事も。
『うっ、やめろ……』
満月に照らされる咲夜の顔が歪む。あの忌まわしき日々を思い出させる夢に苦しむ他ない。
「私やフランは……だけど、あなたは未来を……」
「お嬢様ッ」
刹那、あの赤い閃光。魔方陣のフラッシュバック、夢の洪水が咲夜を瞬く間に覚醒させる。
『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
柄にもなく、叫びながら起きてしまった。
時刻はまだ午前二時。あの夢の夜は半月にも満たない、三日月だった。

夜の博麗神社。長い廊下はそのままに、ハクレイガーとドッキングしている部分がところどころ露出しているのが、月の光に照らされ見える。
「私としたことが、悪夢にうなされて起きるとは……」
長い廊下を歩いていると、とても外が熱帯夜とは思えないくらいに涼しそうに見える。
ハクレイガーの外の風景は、あの雲泥音から程近い場所にある山の中だ。現在はこの山の中で停泊していると言ったところか。
博麗大結界が緩んで広がったことにより、人間や妖怪の住める領域が広がった幻想郷は、前回でも述べた通り、海まで出てくる程度に広くなっている。海の向こうには、たわんだ状態になっている博霊大結界の境界線があるらしい。空の上の結界もたわんでいるらしいが、宇宙はどうなのだろう。
そんな風景を眺めながら、よく冷えた水を飲み干す咲夜。懐かしい悪夢を見たのか、彼女の目にはうっすら涙が浮かんでいるようにも見えるがしかし、涙があろうとなかろうと、咲夜の決意を汚すことはなかった。それはあの悪夢も、決意を揺らがせる原因にはなりえないと言うことだ。
「お嬢様……私は、やらねばならないのですね。新たな時代を切り開くナイフとして、悪を断ち切ることを」
と、月の傍に何かが爆発したような光がいくつも見えた。それを見た咲夜は瞬間的にGJ9メンバーを起こしに動いた。
「あれは……!!」
その外から様子を見ていた者がいる。ミスズンだ。
「あら~、咲夜さんこんな夜中にどこいくんでしょ。依頼を持ってやってきたって言うんに。……あ、ははぁ~、あれを見てしまったでやんすな」
ミスズンも、上空の光を見て何か納得した様子になった。
「それにしても今日の外はなんだか暑いでやんすよ、早くハクレイガーの中に入るでやんす」
「ミスズン、何をしている!依頼を持ち込んできたのなら早く入れ!」
「どしぇー、聞いてたんですねぇ」
咲夜の声とともに神社の玄関が開く。思わずミスズンはこけてしまったが、すぐさま起き上がり、お言葉に甘えて入っていった。
「お前がここに来ると言う事は依頼を持ってくるということだろう。聞かなくても解る。しかもその様子からすると、あの月の光と関係あるのだろう?」
その言葉に待ってました、とばかりにミスズンがうなずく。そこに他のメンバーも起きてきた。レミィやフランの姿もある。
「なんだよミスズン、こんな時間に……」
「へへ、皆さんにいい依頼を持ってきやしてね」
ぼやくレイロックにそう言いながらミスズンは、一同に月を見るように指差し、そして今回のあらましを話したのだった。

少し前。宇宙に浮かぶ月では、一つの抗争が起きていた。
八意永琳率いる、旧八意コネクションと、蓬莱山輝夜率いる、新八意コネクションがヒソウテンソク部隊による急襲戦を仕掛けていた。状況は、旧八意側が不利。新八意側が、一方的な戦闘を仕掛けていた。
旧八意側には、輝夜のライバルであり、不死身の地上人「藤原妹紅」が加勢していたが、新八意側のヒソウテンソクの方が、性能も武装もその数も、圧倒的に上であるため、苦戦を強いられていた。
宇宙空間、月の都上空での戦闘を、静かに見守る永琳は今、月の都にあるコネクション基地の支部にいた。
コネクションと言えど、八意コネクションはいたって善良な組織であり、なぜコネクションと名乗っているのかすらも不思議なくらい人々から慕われていた。所持しているヒソウテンソクは皆、人命救助用に作成されたものであり、災害時の突破能力に長けているが、今出撃しているヒソウテンソクは皆、偵察用ヒソウテンソクであるため、救助はおろか、戦闘はまともに出来ない。
「やはり偵察用ヒソウテンソクではかないませんね……」
月の都の支部を襲われ、窮地に陥っている永琳ではあるが、それほど慌ててはいない。本部の場所が輝夜から見つからない以上はこちらに命の危険が及ぶ心配はない。尤も、不死身である彼女にとって怖いのは財産の危険のほうであるが。
故に、それほど慌ててはいないとはいえ、財産の危険という意味で、月の都のコネクション支部が襲われているのが、永琳にとって望ましくないことであるのは事実である。
「鈴仙とてゐが行方不明になり、友好関係にあった八坂コネクションが解体した今、協力者は妹紅と慧音だけ。八坂の切り札を所持しているお早さんと連絡が取れればいいのですが……!」
お早のことを、永琳は知っている。ハクレイガーはどうやら、八坂コネクションと旧八意コネクションとが共同制作したもののようだ。
「連絡が取れないものを待っていたってしょうがねぇ!私たちだけでやるしかない!」
妹紅の怒号が、永琳のいる部屋に響き渡る。妹紅だ。彼女は今、炎の力で動く全長50m・重量230tの巨大ヒソウテンソク「不死鳥・凱王」の中に乗っており、新八意コネクションのヒソウテンソクと交戦中である。凱王の後ろには、上白沢慧音の乗る巨大戦艦型ヒソウテンソク「白澤・大空白澤」が控えており、凱王の後ろから援護射撃を放っている。
ちなみに彼女達は宇宙服のようなものは着用していない。どうやら幻想郷内の宇宙空間は生身でも平気らしい。
「二人とも、がんばって!……ミスズン、ちゃんと連絡したんでしょうね?」
永琳が情報屋妖怪の名前を呟く。
ここまでのあらましによれば、どうも今回の依頼は永琳直々のものらしい。そしてハクレイガーは……。

「八坂コネクションの切り札?ハクレイガーが?どういう事だお早?」
何も知らなかったという感じで聞くレイロックに、お早はいつものようにウインクして答えた。
「新しい幻想郷の時代を開拓することを願っていた八坂コネクションが……東風谷早苗がいた時代から、ずーっと年月をかけて開発していたヒソウテンソク、それがハクレイガーよ」
その開発には、レミリア=スカーレットも関わっていたと告げるお早の言葉に、咲夜は衝撃を受けた。
「では、お嬢様が作っていたというヒソウテンソクはまさか……」
と一瞬思った咲夜であったが、すぐに思い直した。
「いや、ハクレイガーではないな……お嬢様が作っていたものは紅魔館のクラフトチームが作っていたものだ。しかし、まさかそれとは別にこのハクレイガーが作られていたなんてな」
お早の話によれば、実は開発には八坂、八意、レミリアらだけではなく、霧雨家の人間や、カワシロ・インダストリー、アリス・マーガトロイドなども関わっているらしい。
カワシロ・インダストリーとは、河城にとりという名前の河童が社長を勤める軍需会社で、このにとりという人物は、幻想卿で一番最初に科学を克服した妖怪であるとされる。今現在、幻想郷に普及したヒソウテンソクの50%は、このカワシロ・インダストリーが開発したものである。ダイセイヨウ、ゼゴアマ、マルキュウ、サイレンなども実はカワシロ製である。
アリス・マーガトロイドは、かつて七色の魔法使いと称えられた魔理沙のライバルであり、腐れ縁でもある女性だ。人形を使うことに長けており、この技術がヒソウテンソクの基礎の基礎になっている。霧雨家の人間とは、魔理沙との関係から先祖ぐるみの付き合いであり、今でも森のどこかに居を構えつつ、ヒソウテンソクなどの研究を続けていると言われている。
カワシロ・インダストリーは今も兵器開発を続けているので一概にそうとは言えないが、それ以外の面々は皆、ヒソウテンソクの平和利用と、幻想郷の新しい時代を待ち望んでいる。
さて、この開発チームを知っていたのはお早とマクスだけである。
「マクス、なんで黙ってた!」
「いや、そりゃレイロックが聞かないから」
「あー……」
思わず納得してしまう。確かに、今の今まで、ハクレイガーがどうして自分たちの元に現れたのか気にも止めなかった。そんな裏事情があったとは思わなかった。
「ハクレイガーが作られた事情はこれでわかった。だがミスズン、今は依頼の話だ」
そんな空気を咲夜が打ち破る。ナイフのように鋭い眼光がミスズンを捕らえると、すぐさま彼女を動かした。
「へいへい、それでしたそれでした。……皆さん、月が見えるでやんすね?」
先ほども述べたがその日は満月だった。それも、血のように真っ赤な満月。そして月の傍に、何か光が走る。次々と、何かが爆発するかのように。
「アレは……今回の依頼者?」
「コネクション同士の仲介まで……?俺ちゃんたちの仕事って多岐に渡ってんな?」
「コネクションと呼ばれる存在も一枚裏と言うことではない、八坂や旧八意のように、切に平和を願う集団もいる。だからこそ、我々は悪を討たねばならん……そうだな、お早?」
閃光を見つめながらぼやくお早とマクス。そこに確信を得た咲夜の言葉が聞こえる。
「あぁ、えぇ、そういう事、もともと私とマクスだけでもやらなきゃって思ってたんだけど、十六夜咲夜の復活が確認されて一ヶ月経つまでは自重しなさいって神奈子様に言われててねぇ」
するとレイロックが自分の存在が出ていないことを指摘した。
「俺だけのけものか?」
「やーねぇ、そんなわけないわよ。チームを結成したらいずれ誘うつもりだったの」
慌てる素振りもなく、さも当然のように答えるお早に、レイロックは本当かよと思わず突っ込んだ。
と、その時、空に走る閃光が一層激しくなった!コネクション同士の交戦がいよいよ苛烈を極めている。
「ぐずぐずしている暇はないようだな。GJ9出発だ!」
「イェーイ!」
こうしていつもの如く、GJ9と、彼らを乗せたハクレイガーが人助けのために、とはいっても今回は人助けかどうかは疑問だが、飛び立つのであった。

さて、話はこれからまた更に、数日前に遡る。それは、ハクレイガーが雲泥音においてゼゴアマを倒す前の出来事である。
ひょんなことからミスズンは、永遠亭に向かうことになった。それは旧八意コネクションの本拠地であり、現在は新八意コネクションから逃れるために、慧音に隠してもらっているため、一部の者以外はたどり着くことすら困難になっている。
しかしそれ以前の期間に、旧八意コネクションのメンバーが、情報屋ミスズンに連絡を入れ、彼女に直接地図を渡したお陰で、ミスズンはその足取りが敵にばれることもなく易々とその場所にたどり着くことが出来た。
場所は、何処とも知れぬ山の奥。存在を隠されただけでなく、あの竹林から遠く離れた場所に移されてもいるらしく、滅多なことでは見つからない。当然、地図もそう簡単に解読できるものではなかった。
が、ミスズンはそれを当然の如くやってのけたのである。そうして地図に書かれた場所にやってきたミスズンを待っていたのは果たして、八意永琳その人であった。

「待っていましたわミスズンさん」
「今日はどういったご相談で?」
情緒と風情にあふれた庭園を背にして、お茶をたてる永琳。そこに静かに座るミスズンに、いつもGJ9の前で見せている粗野っぷりはない。
「最近、大活躍している正義のヒソウテンソク乗りたち……GJ9。知っているとは思いますが、彼らが乗っているあの機体は私達が開発したものです」
「なんですって?」
お茶を受け取りつつも驚くミスズンに、永琳は知らなかったのですかとため息をつきながらも、無理もないですねと笑い、続けて言う。
「目的は一つ、コネクションのない新たな時代の開拓のため……」
「へぇ、コネクションを組んでいるあなたが?」
「ふふ、私は開発に協力しただけですがね……。心から平和を願うコネクションもある、と言ってもあなたは理解してくれないでしょうが……」
「いやいや、永琳さん。あなたの活動はあっしもよく耳にしております。コネクション時代突入以前にもあなたは慈善活動をしていた、今も変わらないその決意、流石にあっしだって信じないわけにはいきませんて」
慌てて取り繕うミスズンに、彼女は静かにありがとうと言って微笑んだ。
「彼らに勝手なお願いをするのは気がひけますが……今後、八意コネクションが危機に陥った際はミスズンさん、あなたが彼らを呼んでくれますか?私からの救援依頼という事で」
お茶を一口飲んで、ミスズンを見据える彼女の瞳に曇りはなかった。
「という事は……」
「えぇ、ご安心を。お金はちゃんと依頼料としてお渡ししますので」
仕事として、彼らを呼ぶ。彼らの自由を阻害しないという事である。
「そういう事なら彼らもわかってくれると思うでやんすよ……」
そのような会合からしばらくして後、GJ9はタイカイ・シンジケートを討ち取った。雲泥音に平和を取り戻したところで彼らは、何処へ行くわけでもなく旅立ち、あの山奥で泊まっていたというわけである。もちろんミスズンが永琳と接触していたことなど、知る由もない。

さて、話は現在に戻る。
「このハクレイサンダーなら、単独で大気圏も突破可能なのよね!」
仕事の依頼を受け、早速というかようやくと言うべきか、ハクレイサンダーのコックピットに座る四人。今回は何故かお早のテンションが高い。
「凄いな……二段ロケットいらずってことか」
お早が自慢げに言うことには、ハクレイサンダーの状態ならロケットブースターやシールド装置なしで、大気圏突入や突破が可能である。シンクロン原理によってエネルギーを別宇宙から引き出しているハクレイガーだからこそ成せる技である。更に言えばエネルギーだけでなく、その装甲も特別である。ハイゾルニトリウム合金製の装甲は、大気圏突入などの熱などに強いのはもちろん、魔力や妖力などの流れに対して、他の合金をはるかに凌駕する耐久度を誇っている。……などと解説されても今のレイロック達には余り実感が沸かなかったのだが。
「どう?凄いでしょ?」
「ああ、こいつは……おっと、いよいよ出発準備完了だ」
実感が沸かないながらも感想を言おうとしたレイロックだったが、マクスからの準備完了のコールを受けたものだから、感想を言わず準備完了の旨をお早に告げた。
「あぁんもう、話をそらさないでよ!」
「悪い悪い……」
機嫌を悪くするお早をレイロックがからかう。からかいつつもシートベルトを締め、耐G用の装備を着用する。……しかしそれは宇宙服などではなく、私服の上からミスト状の魔力を撒布すると言ったものだった。
「人間さんの方も準備完了ですぜマクスさんよ」
「あいよ、それじゃ行きますよ!猛スピードで飛びますんでね、舌かまないでチョーよ皆さん!」
「眠気覚ましにばーっと飛ばして欲しいもんだね!」
いつもの軽い掛け合いとともに、いよいよハクレイサンダーが宇宙へ向けて飛び立ったのだった。

そしてシンクロン原理で無限生成されたエネルギーを使い、彼らはいよいよ幻想郷の外へと飛び出した。
「地球は青かった……って奴ですかい。俺ちゃん感激……」
「チョメ!私達は仕事で宇宙にあがったんですからね!」
「およよい、少しははしゃいだってバチあたらんのじゃないの?」
地球を見下ろすハクレイサンダーから、その青い星の様子を見て心躍るマクスは危うく、宇宙に上がったのが八意コネクションの援護であることを忘れかけた。
「しかし咲夜、コネクションを助けるというのは領分じゃないぜ。どうして引き受けたんだ?」
レイロックはと言えば、はしゃいで任務を忘れるわけでもなく、それどころかコネクションの援護と言う今回の仕事を疑問に思っていた。
「そのコネクションが悪ではないからだ」
「本当に、それだけなんですか?」
咲夜の答えにレイロックには引っかかるものがあった。いや、答えにと言うよりはそれ以前から何か、この咲夜と言う女性と八意コネクションには引っかかるものがあると思っていた。
と言うのも、レイロックのご先祖様である博麗霊夢の日記によれば、かつて咲夜と永琳が初対面を果たした時、永琳からはまるで初対面と言うよりは再会と言ったほうがふさわしい驚き方をされたらしい。尤も、この場面は霊夢本人が目撃していないため、彼女の憶測である可能性も否定出来ないものだった。
「それだけだ、異論はないな?」
まるでその説を否定するような言葉を言い返す咲夜に、レイロックはその言葉の裏もあるかもしれないなと思いつつも素直に首を縦に振った。
と、ハクレイサンダーが戦闘宙域に突入した。
「うひゃ、こりゃ暴れ甲斐ありますな」
敵の数を見て、マクスが真顔で呟く。台詞こそ軽いが、真剣な表情からは闘志が感じ取れる。
その台詞に反応してレイロック達も有視界の先を見る。見れば、新八意コネクションの戦闘用ヒソウテンソク「芳夜(かぐや)」が凱王と大空白澤を取り囲んでいる光景が展開されていた。
月の杵突きウサギを思わせる、全長9mにも満たない小型ヒソウテンソクは容赦なく凱王を、自慢のビームハンマーで叩いていた。
「見るからに強そうなヒソウテンソクだけど、あれだけ取り囲まれちゃね!」
お早の言葉と同時に、マクスがそれに呼応してハクレイサンダーのレバーを引く。と、ブースターが唸りをあげて轟き、蒼いジェットが噴射された。まさしく雷の如く、その陣の中へと突っ込んでいった!




銀河幻風ハクレイガー

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【2011/06/01 15:30】 | 東方ノベル | トラックバック(0) | コメント(0)
銀河幻風ハクレイガー・成敗3「有明の海に光る牙」
時は2000と200年、幻想郷に罪の嵐が吹き荒れた!
どっちもこっちもあっちもそっちも見るに耐えない無法妖怪(もの)!
今こそ出番だGJ9、銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切る!




今日も幻想郷を旅しつつ、コネクションの爪痕探すGJ9。さて、神社の中にお早の姿が見当たらないようだが。
神社とハクレイガーの間に存在するカタパルトの中には、空を飛ぶことを忘れてしまった幻想郷の住人のために、空飛ぶバイクが置いてある。これもお早がハクレイガーとともに持ち込んだもの……かと思いきや、それだけではなくレイロックやマクスの自前のバイクもある。お早の分のバイクがないことから、恐らく買出しに出掛けているのだろう。
「幻想郷とはこんなに広い場所だったか……」
ハクレイガーが向かう先に見えるのは、咲夜が見たこともない街。それも幻想郷には似つかわしくない、とてつもなく馬鹿げた大きさの街だ。あれも人里だと言うのだろうか。
「八雲紫が行方不明になってますからね……幻想郷も広くなってしまったもんさ」
何か、魂が宿っていそうなギターを弾きながらレイロックが語る。ギターから流れるメロディは『東方妖恋談』のものだ。
「ミスティアも同じようなことを言っていたな」
「今、博麗大結界は俺の姉さんだけが支えているようなものです。結界が緩んで、幻想郷が広くなってるんですよ。見てください、海まで出来た。幻想郷にはないはずの、あってはならないはずの海まで!」
神社の窓から、彼の指差す方向を見る咲夜。その目に飛び込んできたのは、咲夜にとってはいつぶりに見たかもわからぬ、大きな水溜りであった。
「海だと……」
「ま、新しい食材が手に入ったり、新しい妖怪などと交流が出来たので、だいたいの人は海が出てきても気にしてないみたいなんですけどね」
と、お早が海で取れたであろう魚を持って神社に帰ってきた。早速レミィとフランが歓迎する。
「ただいま皆、ほら、海でしか取れない珍しい食材買ってきたわ♪」
「うわーマグロだマグロだー!!」
「わたしマグロだぁいすきぃ!お早お姉ちゃん、早く料理してっ!」
お早が抱えているのは、間違いなくマグロである。しかもキハダなどではなく、正真正銘のクロマグロである。
「お早さん、高かったでしょそれ」
「うふふ、そうなんだけどね、ちょっとばかし値切ってきちゃった。この先の街の市場で買ってきたのよ」
レイロックの問いにいたずらっぽくウインクし、舌を出して笑うお早。
一方、咲夜はと言えば、恐らく久方ぶりに目撃した本物のクロマグロを見て、ただただ驚愕していた。
「幻想郷の海はマグロが獲れるほど広くて深いのか、お早!?」
「えぇ、そうよ咲夜さん。今、幻想郷では海産物食ブームなのよ」
周りを山で囲まれていた幻想郷は、博麗大結界が緩み海が出来るまでまさしく、そんなマグロはおろか、海栗やサザエ、アジやアワビ、ヒトデにすら無縁であった。お早の話によれば慣れない海産物の調理で、珍料理を生み出す人間も少なくないらしい。そのあたりは海からやってきた新しい妖怪たちとの交流で、だんだんと改善されてはいるとも言うが……。
と、ハクレイガーが件(くだん)の港町に着陸態勢に入った。スピーカーからマクスの声が聞こえる。
「はいよ皆さんお待ちかね、間もなく港町『雲泥音(うんでいね)』に着きますよー!」
お早が先行していた港町の名前は雲泥音と言うらしい。
「ところでお早ちゃん……俺にもマグロ食わせてちょーよ」
「あら聞いてたの?もちろん言われなくても食べさせてあげるから待っててね~」
二人の会話を聞いていたレイロックがギターをケースの中にしまいながら「新婚夫婦みたいだなぁ」とぼやいたのは言うまでもない。

港町『雲泥音』。一見、平和そうに見えるこの街にもやはり、悪党は存在していた。
幻想郷におおよそ似つかわしくない、この港町……その象徴である魚市場を取り仕切る妖怪がいた。
「ふふふ……雲泥音の住民たちは我々がいずれこの街を乗っ取ることを知るまいて。海の幸で人民を魅了していずれ支配し、我々海の妖怪が幻想郷の新しい支配者になる……この計画は誰にも邪魔されてはならぬぞ、いいな?」
「ははっ」
魚市場の奥にある薄暗い事務所の中で、そう呟くのは、海女房と思われる妖怪である。彼女の名前は歌川五十六(うたがわ いそろく)。表向きは、幻想郷に現れた海からの平和の使者であり、その実体は海のあやかしたちで構成されているタイカイ・シンジケートのボスであった。普段は愛想良く雲泥音の町民に、海で捕れた魚介類を安値で売りさばいたり、人間の漁師たちに海の魚の攻略法を教えているが、その裏ではシンジケートに魂を売り渡した人間の漁師たちに多額の金と、魚介類独占権を与えている。つまり雲泥音で流通する魚介類は、おおよそ90%以上が既に漁師たちに占領されているのだ。
そしてシンジケートに魂を売り渡した漁師たちは、次第に身も心もシンジケートの一員となっていく。それは即ち人間から妖怪になっていくという事でもある。
既に、五十六の周りに侍っている男の漁師たちは半魚人となっていた。見た目には普通の人間にしか見えないが、服の下には魚の鱗がびっしりと生えている。漁師たちが違法に占領した魚介類には、五十六をはじめとするシンジケートメンバーの妖怪たちが、食べた人間を妖怪にしていく呪詛をこめたものが混ざっている。一口かじれば心を支配し、二口食べれば皮膚の下に鱗が出来、三口食べれば鱗が皮膚を突き抜けて現れ、四口食べれば鰭が生えると言った具合だ。この漁師たちはその呪詛により、既にシンジケートの一員となっている。
そして自分たちも、まずは自分自身の家族から呪詛を蔓延させていくのだ。呪詛はいずれ、雲泥音の外の人里や、おおよそこのあたりとは関係のない、幻想郷の果てまでも支配するだろう。
「この呪詛が幻想郷全体に広まった時、我々タイカイ・シンジケートが幻想郷の覇者となる……」
邪悪な笑みを浮かべながら、鯱の血を飲み干す五十六の様子を、隠密に覗いていたものがいた。
ミスズンである。
「あ~りゃりゃ、こりゃ大変……雲泥音の皆さんが危ないでやんすねぇ。あっしがこいつらを倒してもいいでやんすがここはGJ9の皆さんに仕事を飛ばす契約ですからに、ささっと退場しますよ~……」
事務所の天井裏からそそくさと抜け出すミスズンに、五十六もシンジケートメンバーも、誰も気づかなかった。それにしても、ミスズンが倒すとはどうやってだろうか?彼女も恐らくはヒソウテンソクを持っているのだろうが、はてさて……。

「あら、なんてこと!このマグロ、変な呪詛がかかってるわ!」
その頃、博麗神社内でマグロを調理していたお早が、件の呪詛が購入したマグロについていることに気がついた。
「変な呪詛?」
その様子を見守っていたレイロックが駆け寄る。
「そういえばこのマグロ、漁師さんから無理言って購入したものなのよ、何かあるのかしら」
「無理言って?お早、君は正規の市場で購入したんじゃないのか」
「えぇ、買った『場所』は正規の市場よ。でもこのマグロは漁師が独り占めしていたものでね……不公平は気に食わないから、半ば強奪って感じで買ってきたの」
「じゃ、じゃあ値切りって……や、今はそれよりこの呪詛だな」
マグロの方に向き直る二人。マクスや咲夜、レミィやフランもやってきた。
「あららららら、これじゃ食べられないんじゃないの」
「食べた人間を妖怪にしていくタイプの呪詛ね……」
冷静に分析するお早。と、その時、ミスズンが博麗神社の玄関をノックする音がした。そしてそれに気づいた咲夜が、神社の中に入ることを許可したと同時に、ミスズンがかなり慌てた様子で駆け込んできた。
「皆さん大変で……おおっと、皆さん取り込み中でやんしたか」
「どうしたミスズン、そんなに慌てて」
「いやいや、皆さんに仕事の話を……」
と、言いかけたところで、まな板の上に乗っている呪詛憑きのマグロに気づくミスズン。
「ややややっ!!それはタイカイ・シンジケートが秘密裏に使おうとしている呪詛憑きの!」
「タイカイ・シンジケート?それはいったいなんだミスズン」
「へへぇ、それなんですけどねぇ咲夜さん。あっし、皆さんよりも先にこの雲泥音の調査をしてたんでやんすよ。んで、仕事の依頼を受けたついでに、何か美味しいものを皆さんに買っていこうかと、あの魚市場に行ったら見るからに怪しげな連中が、何やら高級な部類の魚介類を市場の奥に運んでて……」
高級な部類の魚介類とは言うまでもなく、マグロをはじめとして、我々の世界でも高級魚として流通しているものである。ただし、この世界ではまだ、アジは高級なものではなく大衆魚であるが。
「それで、そのシンジケートの一員の妖怪たちが、呪詛をかけていたんでやんす」
「何のために」
サングラスの奥から眼光を光らせる咲夜に、ミスズンは臆することなく話し続ける。
「まずは自分たちの傘下に下った漁師たちを妖怪にして完全に自分たちの仲間にして、いずれは呪詛をかけられた魚介類の流通を解禁し、幻想郷全体を海の世界に変える……と、あっしが潜り込んだ市場の奥の事務所で、何やら偉そうな妖怪がそう話していたでやんすからね」
という事は、このままメンバー全員が呪詛に気づかずに食べていたら、彼らもまんまとシンジケートのメンバーになっていたかもしれないと言う事だ。八坂コネクションの抱え子で、風祝の末裔であるお早と、神社の息子のレイロックというまじないのスペシャリストがいたおかげで、寸でのところで回避できたというわけだ。
「危なかった~」
「でもお姉ちゃん、わたしマグロ食べたいよ……」
安堵するレミィと、泣き出しそうになるフラン。
「そのためにも悪い奴らは一網打尽にしておかないとな」
「へへへ、そうこなくっちゃ」
サムズアップしあうレイロックとマクス。
「ところでミスズン、さっき依頼を受けたと言ったな?」
話の中に埋もれかけていたキーワードを、咲夜はきっちりと拾っていた。
「依頼者は……誰だ?」
「自分の夫を妖怪に変えられた奥様方の同盟からでやんすよ……あっしはその話を聞いて、あの市場に潜り込んだんでねぇ」
この呪詛の被害者は間違いなく存在する。彼ら漁師の家族を、雲泥音を、幻想郷を救うためにも必ずシンジケートは一網打尽にしなければならない。
「依頼料は?」
やはり、それでも、きっちり、金は取る。
「10万円程度で許してやってくだせぇ」
10万円。300万円を受け取った前回の依頼に比べればかなりの安金である。しかし咲夜は納得した表情をしながらも首を横に振った。
「解った。だが弱者から金はむしりとらない主義だ。1万円で引き受けよう」
それを聞いたマクスは咲夜に本気かと問うた。だが、咲夜は本気で、この依頼をたったの1万円で引き受けるつもりだ。
「しょうがないですねぇ、こうなったらやるしかない!」
「あらあら、あなた100万円なら引き受けるとか言うつもりじゃなかったんでしょうねマクスちゃん?」
「そういう冗談は嫌いだぜお早ちゃん?」
「うふふ、ごめんなさいね?それじゃ私は、今この街がどれだけ汚染されているのか改めて調査するわ」
お早がマグロを冷蔵庫の中にぶち込みながら言う。シンクロンシステムで冷蔵庫の中身が拡張されているらしいが、入れるのはかなりきつそうだ。
「それ食べるのか?」
「呪詛なんてかけた奴らを倒せば解けるお約束でしょ?」
「それもそうだ」
「それじゃお先に失礼するわ!」
「気をつけろよ!」
お早が神社の玄関から出て行き、雲泥音の長屋通りに向かったのを皮切りに、レイロックやマクスも飛び出して、彼女とは別の方向に向かっていった。

ところ変わって雲泥音、長屋通り。お早よりも先に、この街の異変を調査していたものがいた。
風変わりな着物を着用し、頭には古びた警察官の帽子を被っている女性だ。彼女の名前はコトコト。幻想郷の警部だ。
「タイカイ・シンジケート……本当にそんな組織が?」
彼女もまた、コネクションやシンジケート、その他の犯罪組織勢力による幻想郷の制圧を止めるべく動いている者だった。しかし彼女は警部でありながら、形骸化、無力化した幻想郷の警察機関を最初からあてにせず、全て自分ひとりで調査し、組織の実態を追求している。実質、彼女はデカと言ったほうが正しいのかもしれない。
彼女は今、長屋通りと、歓楽街の境目にある居酒屋に来ていた。
居酒屋とはいっても、この時代の幻想郷では禁酒法が何者かによって施行されており、この居酒屋も表向きは寿司屋として活動しているものであった。
「ここだけの話ですぜ刑事さん……」
店主がコトコトに耳打ちしようとしたその時、かわいらしい声がコトコトの横から聞こえてきた。
「うふふ、その話、私にも聞かせてちょうだい」
いつの間にかコトコトの横にお早がいる。右手に空のグラスを持っていてそれを器用に回していた。
「……君は?」
「同業者ってところかしら、警察じゃあないけど」
ふとグラスを見ると、いつの間にか空だったはずのグラスの中に、透明な液体が注がれていた。いや、注がれていた?それはふさわしくない。少なくともコトコトの目には、お早がグラスを一回転させた瞬間にもうこの液体はグラスの中に入っていた。
「マジシャン……ではないな?手品にしては簡素すぎる」
どこに種を仕掛けた?と聞くコトコトに対して、お早はグラスの中の液体を飲み干してから、「さぁ?」と一言答えた。
「私のグラスの種なんかより、シンジケートのほうが重要じゃないかしら……?あなたも私も、この街を牛耳る妖怪連中についてどうにかしたいと言う目的は同じでしょ?」
「なるほど、そうか」
そして二人が店主の方に向き直る。
「そうでしたねぇ、シンジケートの話……などと裏事情をやすやすと話すと思ったか!」
突然店主がカウンターの下から、エネルギー弾を撃つことが出来るライフル銃を取り出した。その腕には既に、海の妖怪の仲間になった証である鱗がびっしりと生えていた。
「旨い話にゃ罠がある、刑事さんもうちょっと気をつけなさいよ?」
瞬間、お早が豪快にジャンプし、店主の顔とライフルを蹴り飛ばした。完全にノックアウトさせたところで、コトコトにウインクしてもみせた。
「あ、あぁ……道理でホイホイ話が進むと思った……危なかった……」
「まだ安心するのは早いわよ!」
お早の言う通り、既にこの店はシンジケートメンバーに包囲されていた。
「私もあなたも相手にとっちゃ、頭の黒いネズミさんよ。さっさとずらかりましょ」
言うが早いか、お早は持っていたグラスを玄関のドアの後ろに隠れているシンジケートメンバーに向かって投げつけた。瞬間、グラスが破裂すると同時に、轟音と白煙が巻き起こった。
「煙玉!?」
「もちろん種も仕掛けもございませんのことよ。さ、逃げましょ!」
こうしてお早とコトコトが、シンジケートのメンバーから逃走を始めたその頃、レイロックたちは……。




銀河幻風ハクレイガー

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【2011/01/10 08:19】 | 東方ノベル | トラックバック(0) | コメント(0)
銀河幻風ハクレイガー・成敗2「GJ9、晴れて旅立ち」
時は2000と200年、幻想郷に罪の嵐が吹き荒れた!
どっちもこっちもあっちもそっちも見るに耐えない無法妖怪(もの)!
今こそ出番だGJ9、銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切る!




博麗神社、というよりレイロック邸と一体化したハクレイガーの中は、さながら宇宙移民船のような形相であった。
「凄いな……これならどこにだっていけそうだ」
中を見て驚きを隠せない咲夜に、お早が近づいてきた。
「月にいる八意(やごころ)コネクションと戦う時にも便利よ、宇宙だって飛べるんだからこれ」
「宇宙か……」
かつて、咲夜は永夜抄の一件で宇宙に行った事がある。
八意永琳が月を隠した事件で、本物の月を空に戻すために宇宙に行った事がある。
いや、今思えばあれは本当に宇宙だったのだろうか?あの時辿り着いた月も結局は、八意永琳の作り出した偽物であったのだから……。
「咲夜さん、どうかしたの?なんだか顔色が変よ?」
「あ、いや、すまない……ただな。優曇華院、鈴仙・優曇華院・イナバは今も生きているのだろうかと」
本当は、そんな奴のことなど微塵も考えていなかったが。
「うどんげ?」
「月のウサギだ」
「聞いたことがないわそんな人……昔話に出てきたような気はするけれど。咲夜さん、あなた何者?まさか本当にあの十六夜咲夜だとでも言うの?」
それを聞いて咲夜は、自分の素性をレイロック、レミィ以外に話していないことを思い出した。
「そういえば話していなかったな、私が何者なのか……お早、全員をハクレイガーの司令室に呼んでくれ」
「わかったわ」

司令室。レイロックとレミィを含むGJ9の全員が集まった。
「なんだなんだ?」
「咲夜さんが自ら話があるとか」
マクスがお早と話していると、咲夜が咳払いをする。
「諸君、私は200年前の人間だ。と言ってもレイロックとレミィは既に知っていると思うが」
それを聞いたお早は純粋に驚いたが、マクスはやはりそうかと言った表情になった。フランはといえば事の次第をよくわかっていないらしく、レミィに何を言ったのか聞いている。
「本当なのね、咲夜さん?」
「やっぱり俺の予想通りだった、ちょっと時代についていけてない感があったんだよねぇ」
「私はこのコネクションの時代を終わらせるために、200年前にコールドスリープを施され、そして一ヶ月前によみがえった!ついに、その時が来たのだ……」
「咲夜さんの主人だった吸血鬼、レミリア=スカーレットの能力で、ですか?」
フランをおんぶしてあやしていたレイロックが尋ねる。
「そうだな。お嬢様は私に未来を切り開いてほしいと命令した」
「まぁ事情はよくわからないけれど、とにかく咲夜さんと俺ちゃん達が力を合わせないと、こんな嫌な時代を終わらせることは不可能だってことだな?」
「そうだ、これはお嬢様が、そして私自身が決めた運命だ!」
何処からか取り出した紺色のサングラスをくるくると回してから、装着する咲夜。
「いいぜ、文句はない」
「私たちもその運命って奴に乗っかりましょ!」
「イェイイェーイ!」
「ありがとう皆。……しかし、私が呼べと言った奴以外の者もいるな。隠れてないで出てきたらどうだ?」
瞬間、司令室の入り口に突如として銀のナイフが現れ、壁に突き刺さる。と、同時にどこか怪しげな雰囲気の女が悲鳴をあげて現れた。

「しょえぇぇ……」
「あれっ、確かに呼んだ覚えのないお客さんですこと」
その女はかつて、紅魔館の門番の仕事に就いていた妖怪『紅美鈴(ホン・メイリン)』によく似ている。
「美鈴?いや、違うな。彼女は200年前、妖精コネクションとの抗争で最初に犠牲になった……誰だお前は?」
「へへ、あっしは情報屋を営んでいるミスズンと言うものでして……GJ9の皆さんにコネクションの動向情報や仕事の依頼などを、ちょっとね、こう伝えようと思いましてね」
「我々に肩入れしようという事か」
ミスズンが手をもみながら咲夜にすりよるのに対して、咲夜自身はあくまでも冷静に取引に応じるつもりでいる。
一方、レイロックはといえばミスズンの態度に不審なものを感じていた。
「いいのか咲夜?こいつ、裏で何をたくらんでいるかも解らんぜ。何せミスズンといえば裏の世界では有名だからな」
ぎくりとするミスズン。彼の言うとおり、この情報屋はコネクションの間と間を行きかう、いわばスパイでもある。貧弱そうな見た目によらず、凄腕の暗殺者であったとも噂されている。
「まさかミスズンさんよぉ、俺たちの情報を流してコネクションに潰させようって魂胆じゃああるまいね?」
マクスもミニ八卦炉を取り出して構える。
「いやぁいやぁいやぁいやぁ、そんなまさか!あっしはGJ9の皆さんの味方でして、決してコネクション側に情報を渡そうだなんて!」
「レイロック、マクス、抑えてくれ。私は今、彼女と商談しているんだ」
「ちぇっ、仕方ないな」
「ミスズン、そのつもりは決してないのだな?」
「はいはいはいはい、あっし皆さんの戦いっぷりを見てすっかりほれ込んじゃったからには、コネクションから情報を抜き取っても、あっちにこちらさんの情報を渡すだなんてことはいたしませんぜ!」
「ではそれを誓ってもらおうか」
「へい、もちろん」
ミスズンが待ってましたと言わんばかりに、契約書らしき書類を取り出す。
その書類の内容を見て、突如として咲夜は激昂し、ナイフを契約書に突き刺す!
ナイフは書類はもちろん、机を軽く貫通し、危うく書類を置いたミスズンの指を切り裂くところであった。
「あわ、あわ、あわわわわわわ……」
「お前はこのような契約を、私たちと結ぼうとしていたのか?」
レイロックたちがその書類の内容を見に行く。その内容は、GJ9にとっては非常に不利なものばかりであった。
「お前って奴はやっぱり信用ならないな!流石裏社会のミスズンさんは違いますねぇ!」
「めめめめ、滅相もございませぬぅ!!その書類はちょ、ちょっとした冗談だから許してね、ほんとよほんと……こちらが、本当の書類でござんす」
改めて書類に目を通す咲夜。今度はふむ、と一つため息をついてから何も言わずにはんこを押した。
「この内容ならば私たちも十分に動ける」
「お気に召していただけまして感謝至極でござい……それで、早速契約が結ばれたので仕事の話にとりかかりたいんでやんすが」
「いいだろう」
呆れて頭を押さえるレイロック、マクス、お早を他所に咲夜は頷き、仕事の依頼を聞くことにした。
「へへぇ、では……。森の奥に住む妖怪の歌手から、かつての友を討ってほしいとの事でやんす」
妖怪の歌手と聞いて、咲夜とレイロックが同時に反応する。
「それはミスティア・ローレライのことか?」
「それって、まさかあの人気歌手のみすちーか!?」
そこで顔を見合わせる二人を他所に、ミスズンが話を続ける。
「その通りでやんすよ二人とも。彼女はかつての友がコネクションの主として好き勝手やっていることに、心を痛めているでやんす。自分のヒソウテンソクは一応持っている彼女ではありんすが、一人だけでは友を討つどころか、改心させることも難しいということで、あっしに一緒にやってくれる人達を探してほしいと持ちかけてきたんでやんす」
「へぇ~、あのみすちーが……そんな血生臭いことを考えてたとはねぇ」
「私もよく聞いてるわ彼女の歌、いいわねぇアレ。200年前とかもうそれ以前の時は酷かったっていうのは、都市伝説じゃないかしら」
マクスとお早もミスティアについて話し出す。
「待て、ミスズン。彼女もヒソウテンソクを持っているのか?」
「え、えぇ、そうでやんすが。今の時代は妖怪のだいたいはヒソウテンソクを所持しておりまっせ」
「むぅ……200年前とは大違いだな」
まさかあの夜雀までもがヒソウテンソクを持っていたとは咲夜は全く予想できていなかった。
「それで、彼女が我々とともに討ち取りたいという、『かつての友』とは……」
「へへぇ、それなんですがねぇ……あの妖精コネクションのボス、チルノでござんして」
四人に、そしてレミィとフランにも戦慄が走る!あの妖精コネクションのボス、チルノを彼女は討ち取ろうというのだ!
「やってやろうじゃねぇか……妖精野郎どもには、山ほど借りがあるんだ!」
「それに彼女は……200年前の時点で既に力ある妖怪であったが、そんな彼女でも今のコネクションには勝てないのだろう」
「そうなると、私たちの出番よねぇ……?」
「引き受けていただけるでやんすか」
「もちろんだ、あとは依頼量だが……」
きっちり、金は取る。
「彼女は手伝ってくれた勢力に300万円出すと言ってるでやんす」
「ま、彼女にとってはお小遣い程度かもなぁ。今や彼女の歌を買わない奴はいないし」
それくらいは当然だとレイロックは言った。
「悪くない、GJ9出撃だ。諸君、準備はいいな?」
「イェーイ!」

魔法の森。かつて霧雨魔理沙が住んでいたその場所に、ミスティアは住んでいた。ちなみにマクスは人里の方に住んでいる。マクスの二代前に引っ越したため、この家は何十年も空き家であったのだが、何年か前にミスティアがこの土地を買い取って以来、この家はミスティアの家になっていた。
200年前と余り変わらぬ情景の中に、ごく最近出来たであろう倉庫らしき建物が建っている。恐らくは、ミスティアのヒソウテンソクの倉庫であろう。
そんな魔法の森に、ハクレイガーがレイロック邸ごと飛んできた。
「ミスズンの連絡通りね……あれが噂のGJ9!」
既に妖精コネクションのヒソウテンソク「ダイセイヨウ」3機相手に対して、派手に暴れまわったことが噂になっていたようだ。
「うわぁお、まさか本物のみすちーに昼間から会えるだなんて思わなかったぜ……」
「こらこら、デレデレしないの。俺たちゃ仕事で来たんだぞマクスさんよ」
「へいへいわかっておりまっせ」
軽い会話が弾む二人を見て、ミスティアは霊夢と魔理沙の子孫ではないかと感づいた。
と、そこに咲夜が現れる。
「久しぶりだな、ミスティア」
「あなたは……ま、まさかあの時のメイド長!?どうして普通の人間のあなたが!?」
「死んださ、メイド長としての十六夜咲夜はとうに死んだ。今君の目の前にいるのはGJ9リーダーの十六夜咲夜だ」
「理由になってない気がするけどいいわ……本当に久しぶりね。幻想郷は見ての通り、何もかもが壊れてしまったわ」
人間と妖怪の区別がつかなくなってきた。しかも原因は、ただ単にヒソウテンソクの普及とコネクション時代の突入という事だけではないという事である。
「博麗大結界を締める二つの柱が失われているという事か……」
「そうね、そういう事。そこにいる華奢な坊やは博麗の子でしょう?男に生まれなかったってだけで巫女になれなかった……」
「ははは、そう言われるときついもんがありますね。でも大丈夫、巫女は姉がしっかりやってくれてますんで」
姉がいたのかと咲夜が聞く。というのも、あのダイセイヨウとの戦いから一週間経ち、その間にGJ9のメンバー全員が元いた住居から、ハクレイガーの中に引越し準備をしていたのだが……その間、レイロック以外の博麗家のものを見なかったからである。
「えぇ、まぁ。元あった博麗神社は諸事情で使えなくなったんでね。別にハクレイガーと一緒になったから、神社として使えなくなったわけじゃないよ。姉が巫女を勤めている新博麗神社は、残念だけど俺もどこにあるかは知らないんだ」
「じゃあ、あのボロ神社には……もう君しかいないのか?」
「今はGJ9の皆さんがいるけどね。そんなことより咲夜、仕事の話を。依頼人を待たせるのはよくないぜ」
言われてはっとした。
「そうだな、すまなかった」
「いえ、いいのよ……妖精コネクションへの戦闘は今夜仕掛けるわ」
夜なら自分の力もある程度は強まるから、勝機はあるかも知れない。と、ミスティアは言っている。
妖精コネクションの本拠地は、あの忌まわしき霧の湖の近くにあるという。その場所を地図で指し示され、咲夜は驚いた。
「ここは……紅魔館があった場所じゃないか!ミスティア、どういう事なんだ!?」
「あなたがいなくなったあと……あの紅魔館は妖精コネクションの本拠地になったのよ。チルノ達の手によって……紅魔館は妖精の天国になった。妖精コネクションのメンバーには、紅魔館でメイドとして働いていた裏切り者も大多数よ」
それを聞いて、咲夜の米神がぴくりと動く。自分の部下であった者がたくさん裏切り、あの妖精コネクションに加入したなど、許せるはずがない。
「チルノめ……増長もそこまでだ」
「作戦の決行は今夜よ……作戦を練るついでに、私のヒソウテンソクでも見てみたらどう?」
「うむ……ここで怒りを燃やしていても何も始まりはすまい。見せてもらおう」
「えぇ、その代わり、あとであなた達のハクレイガーも見せてちょうだいね」
「うーん、出来ればそうしたいけど、超でかくなるからなぁ……」
「あら、じゃあ戦闘中に確認するわ」
全員、ずっこけた。
「あっさりしてるな~……」

「うわー!凄いすごーい!!」
ミスティアの倉庫。倉庫内にあった彼女のヒソウテンソクを見て、レミィとフランがはしゃぐ。
小豆色と桜色で彩られた、かわいらしい外見のそれは、名を「サイレン」と言う。
「ハクレイガーよりも大分小さいわね……もしかしたら、ダイセイヨウよりも小さいかも」
冷静に分析するお早。確かに、サイレンの大きさは20mもない。
武装も、特にこれといったものは見えないが、背中にはスピーカーのようなものを沢山詰め込んだミサイルランチャーのようなものが背負われているのが見えた。
「みすちーさん、このミサイルは?」
「それ?いわゆる、あたしの歌を聞けって奴」
「へぇ?相手のコックピットに打ち込んで歌を聞かせて無力化しようって奴ね」
「そういう事。でも妖精野郎はセンスがないね。皆、私の歌を聴いても襲い掛かってきたよ」
「ふーん、ま、妖精ですからね……他に武装とかはないのかしら?」
「スペルカード具現化システムは……言わずもがな。翼の羽根はナイフになるし、あとは腕のドラムマシンガンくらいかな」
それでよく渡り合おうと思ったなとお早は、逆に感心した。
「ねー、みすちーおねえちゃん、ちょっとサイレンさんの中に乗ってみてもいーい?」
「いいわよー」
喜んでサイレンの中に入るスー姉妹の様子を見て、お早が少しだけ慌てる。
「エンジン起動させられたらどうするつもり!?」
「大丈夫、大丈夫、鍵は見ての通り、ほら」
ミスティアの胸元には、鍵のかたちをしたペンダントが。これがサイレンの起動キーになっているらしい。
「それに、人間の子供の力で壊れるような素材なんか使ってないしね!」
確かに、コックピット内の様子を見るに二人はいたずらなどする気配はないし、されたところで見るからに、妖怪でなければ動かせそうにないものばかりである。
一方、レイロックたちは元「霧雨魔理沙の家」である、ミスティアの家の中にいた。




銀河幻風ハクレイガー
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【2010/12/23 20:44】 | 東方ノベル | トラックバック(0) | コメント(0)
銀河幻風ハクレイガー・成敗1「幻想郷、壊乱」
時は2000と200年、幻想郷に罪の嵐が吹き荒れた!
どっちもこっちもあっちもそっちも見るに耐えない無法妖怪(もの)!
今こそ出番だGJ9、銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切る!




1885年……明治18年の時。
幻想郷は日本と袂を別った。博麗大結界によって時代を超えた、人とあやかしの世界が出来上がったのだ。
そしてそれから百年と幾十年かあとのこと。スペルカードルールにより平穏を保っていた人とあやかしの関係は突如として崩れることになる。

外の世界からやってきた神様の作った蒸気からくり巨人「ヒソウテンソク」の登場が、人やあやかしに革命をもたらした。人やあやかしは、これを見て文化的な衝撃を受けたのだ。
そして皆、こぞってこの、ヒソウテンソクを作り戦わせるようになった。それが、ごっこ遊びの範疇で済めば良かったのだが……。

やがて、明治から動かなかった幻想郷の時代が大きく変わることになる。
あやかし達や神、人など各勢力が、「コネクション」と呼ばれる派閥を作り、幻想郷の覇権をかけて戦争を起こしたのだ。
「お嬢様、ここは危険です。ヒソウテンソクを持ち合わせていないこちらは不利、どうかご決断を」
今まさに、紅魔館がその戦争に巻き込まれ、風前の灯火にさらされている。
状況は不利。湖は既にチルノ率いる妖精コネクションが制圧。紅魔館も今まさに、それとは別のコネクションに制圧されかけていた。
紅魔館は、各コネクションがヒソウテンソクを自前で精製し、他勢力とぶつかり合っている中でただ一つ、ヒソウテンソクを作らなかった勢力である。
理由は単純なものだ。当主・レミリア=スカーレットが「吸血鬼の力に比べれば蒸気で動くはりぼてなど屁でもない」とたかをくくったのである。もちろん、当初はそれだけの実力差はあった。
だが、今、この状況……各コネクションのヒソウテンソクはあの時に比べて、格段にパワーアップしていた。技術も、武装も、パイロットも、何から何までパワーアップしていた。今や紅魔館は妖精コネクションにすら圧倒される最弱の立場となっていた。
だが、レミリアも時代を読めていないわけではなかった。
遅すぎたのだ。この時、紅魔館はようやく、パチュリー・ノーレッジの協力の元、自前のヒソウテンソクを製造しようとしていたのだ。
「咲夜。コネクションの時代はあと何百年も続くでしょう」
「はっ……?」
「私は出遅れてしまったわ」
「出遅れたなどと……」
それ以上の言葉はいらないと、静かに、自分の前に跪くメイド長の、その赤らんだ唇に右の人差し指を当てるレミリア。メイド長の目には涙がたまっている。
「コネクションの時代を終わらせ、新たな時代を築くのは私たち紅魔館ではなく、あなたと……博麗の血筋のものと、霧雨の血筋のもの、それに東風谷の血筋のものよ」
今はもう動けないけれど、未来ならやれる。レミリアはこうも付け加えた。
「私やフランは……だけど、あなたは未来を……」
言いながら言葉をすぼませ、と同時に何かの呪文を呟く。
「お嬢様、何を!」
崩れ往こうとする紅魔館。その中で話す二人。ここで咲夜が謎の魔方陣に拘束される。
「咲夜、あなたの時を止める能力は『時を越える能力』でもあるわ。いつしか目覚めた時に三つの血筋のものを集めて……コネクションの時代を終わらせて頂戴。それは私からの最後の命令で、そして」
あなたの運命。
そう言い放った瞬間、咲夜が強制解除不可能時空停止状態に陥った……言い換えればコールドスリープである。
レミリアが最後の力を、そして最期の力を振り絞り、咲夜の制御を壊す時空停止魔法を発動した。
「お嬢様ッ」
瞬間、咲夜は当主に向かって叫んだ態勢のまま、異空間に飛ばされた。
最後に咲夜が見た光景は、無敵の吸血鬼であるはずのレミリアが笑顔で、あっけなく謎のコネクションの駆るヒソウテンソクに倒される、無残な光景であった。そして、そのヒソウテンソクに乗っていたのは見覚えのあるあやかしであった……。

そして、咲夜が当主レミリアと離別した年から200年後。




「イヤッハー!!」
ここは幻想郷のとある人里。この人里は妖精コネクションの支配下にあった。今、一人の少女が、大量の妖精たちに追い回されている。
幻想郷は壊乱していた。コネクションの抗争は今まさに絶頂に達していた。
どこを見てもならずものが悪さをしでかし、ないに等しい警察組織を、ヒソウテンソクで脅かしていた。
「誰か助けて……!!」
かつて、その人里の近くには湖があり、そこには運命を操る程度の能力を持った吸血鬼が住んでいたという。
少女は、その伝承にある吸血鬼とどこか良く似ていた。
走る少女、飛んで追いかける妖精たち。そのスピードの差は歴然であった。
裏路地に逃げ込んで隠れようとした少女だったが、途中で石に躓いて転んでしまう。
「あっ……!」
「ヒャッハッハッハッハッハッハ!!!」
今がチャンスとばかりに妖精軍団が少女に襲いかかろうとした、まさにその時、銀のナイフが突然、妖精達の眼前に出現。そして額に突き刺さっていく。
「ぐぅわっ!!」
「ぎゃあっ!!」
「何奴ッ!?」
少女がはっとして、顔を上げる。そこには、かつて紅魔館のメイド長であった十六夜咲夜その人の姿があった。
「たかが妖精風情が……人間の子供を追い回して何様のつもりだ」
200年前に封印される以前とは想像もつかない、高圧的で男性的な態度と喋り方、そして200年前と何一つ変わりない独特の威圧感が、妖精たちを襲う。
「……あなたは」
そして、助けた少女の顔を見て、一瞬はっとする咲夜。だが、敵はまだ動いている。
瞬間的に意識を戦闘モードにまた切り替え、次々と妖精を200年前と変わらぬ体術で薙ぎ倒していく。
「早く逃げた方がいい。でなければ、そこに隠れていろ」
少女をかばいながら、妖精達を睨み付ける咲夜。流石の妖精たちも、自慢の不死身ともいえる体力だけでは太刀打ち出来ないと、今やっと悟った。
その隙を突いて、咲夜は少女を抱え、時を止めて走り出そうとした。
しかし……時が思ったように止まらない!4秒、止められればよかったのに止まった時間は1.5秒に過ぎなかった。それでも、妖精たちから逃げるには十分すぎる時空停止であったが。
その時、新手の妖精達が、目の前の裏路地の出口から飛び出してきた。
「挟み撃ちかっ!?拙いッ!!」
咲夜がまたナイフを投げようとしたその時、咲夜の上から赤い閃光がほとばしった。

「誰だ!?この赤い閃光、いや、札!まさか霊夢!」
赤い閃光の正体が札であることを知った時、咲夜は思わず旧友の名を叫んだ。
だが、彼女は……恐らく、自分が封印された200年前に死んだ。そんなはずはない。では誰だ?
「霊夢って俺の先祖の名前じゃん、結構有名なんだな」
そこにいたのは、おおよそ霊夢とは程遠いイメージの、華奢で背の高い男であった。顔は少々日本人離れしてはいるが男前であり二枚目である。
「それにしても女性二人をよってたかって趣味が悪い奴らだ、博麗・レイロック、助太刀する!」
拳銃を構えるような指のかたちで構え、長屋の屋根の上から飛び降りながら妖精たちに札を打ち込むレイロック。
彼のその姿は、かつての霊夢の姿と重なるものがあった。
「お嬢様の言っていた、博麗の血筋のものか……探す手間が省けた!」
「手間が省けた?何の事かは……とりあえず、今はこの状況を脱するのが先だと思いますよ!」
「それもそうだな、レイロック!」
咲夜も改めてナイフを投げる。時を止める能力はやはり、思い通りにならないものの……投げのテクニックでそれをカバーすることで、一見すると遜色ないように敵を仕留めていく。
妖精たちの阿鼻叫喚を、耳栓で塞ぐこともなく三人はあっという間に裏路地を脱出した。
「最後のおまけだ、受け取れよ!」
裏路地を出てしばらく走ってからレイロックが、自らの霊力をバズーカに変えて追っ手に向かって発射することで、ひとまずは難を逃れたのであった。

「で、手間が省けたって?」
それからまた距離を離し……かつて博麗神社があった場所にやってきた三人。ひとまず落ち着いたところでレイロックが先ほどの咲夜の発言を指摘した。
「私は十六夜咲夜、君たちにとっては200年前の人間だ」
「なんだって!ご先祖様の遺品の日記に、確かそんな名前の人間が出ていたけどまだ生きていたなんて!」
驚くレイロックが、あやかしに変貌したのかと指摘しようとしたが、咲夜は既に先手を打ち、レイロックの仮想している質問に答えた。
「安心しろ、妖怪になったわけではない。私はこのコネクション時代を終わらせるために、200年の時を越えたのだ。コールドスリープによってな」
「なぁるほどぉ、で?」
本当はコールドスリープなどと横文字で簡単に書けるような事象ではないのだが、それでレイロックは納得してくれた。と同時に彼は咲夜の次の言葉を促す。
「コネクション時代を終焉に導くには、博麗の血筋のものである君と、霧雨、東風谷の血筋のものが必要でな」
「なるほどね、そういう事ならお安い御用さ。東風谷は知らないけれど、霧雨の血筋なら……先祖からの付き合いだからすぐわかりますよ、えーっと……なんて呼べばいいんですかね?」
「ふふ、咲夜でいい、こちらもレイロックと呼ばせてもらう」
「わかった。……あ、さっきから気になっていたんだけど、その子は?」
その子……先ほど裏路地で救出した、レミリア似の女の子はさっきから咲夜の後ろに隠れている。
「……レミィ」
「ん?」
「レミィ・リィ・スーって言うの、私……」
何か、怯えながら名前を言う少女レミィ。咲夜は彼女がレミリアの転生後の姿ではないかと先ほどから、勘ぐっていたのだが、これで疑問が確信に一歩近づいた。
「レミィ、君には双子の、ないし5歳年下程度の妹はいるか?」
「あ……!!フラン!やばい、家に置いてきちゃった!妖精たちに襲われているのかも!!」
急に慌てだすレミィの様子を見て、やはりと確信する咲夜。
「咲夜、こりゃやばいんじゃないのか。その、この子の妹が危ないぞ」
「この子じゃない、レミィなの!……お願い、咲夜さん、レイロックさん、妹を助けて……」
「小さい子に泣かれるのは好きじゃないんだよなぁ……当然、お兄ちゃん達が助けてきてやるぜ」
ぐっとサムズアップし、爽やかな笑顔をレミィに見せるレイロック。
「イェーイ!……さ、レミィも」
「い、イェーイ」
「うん、いい感じ!苦しい時も、元気になれる魔法の言葉さ!」
レミィを元気付けてから、咲夜の方に向き直るレイロック。
「行きましょう、彼女が危ない!」
「あぁ、すぐに!」

銀河幻風ハクレイガー




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【2010/12/22 10:34】 | 東方ノベル | トラックバック(0) | コメント(0)
銀河幻風ハクレイガー……ってどうでしょう?
ツイッターに引きこもり気味だった葛城修が、ついに東方二次創作ノベルに着手する!

銀河幻風ハクレイガー

時は2000と200年、幻想郷に罪の嵐が吹き荒れた!どっちもこっちもあっちもそっちも見るに耐えない無法妖怪(もの)!今こそ出番だGJ9、銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切る!




国際映画社の名作ロボットアニメ、J9シリーズを東方でやったらどうなるかという試みです。
時代設定は今の幻想郷から200年後、妖怪たちがコネクションを組み幻想郷の支配者を争う時代。
人と妖怪は「ヒソウテンソク」を用いた新たなスペルカードルールにより、幻想郷を蝕んでいった。
今こそGJ9の出番である。銀河幻風ハクレイガー、常世の悪をぶった切れ!

このブログのことなので進行、更新なんかには余り期待せずに見てもらえると嬉しいです。
熱意ある限りはとまることはありませんし(だからといって、今とまっているものから熱意が消えたわけじゃあないぞ)
【2010/12/20 22:40】 | 東方ノベル | トラックバック(0) | コメント(0)
越えられない壁を越えていけ!


そんなタイトルどおりに人生は行かないかもしれない。だけど大事なのは心意気、泣きたい時は泣く人の頑張るブログ。拍手機能とコメントの違いがイマイチわからない

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Author:葛城修
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ウチの子 レンタルチュウ
今更ながらレンタルしてもおkと主張してみる日(((((((((((
えぇ、バナーリンクわからんのでテキストリンクですが何かd

男 1989年3月21日生まれ←野上良太郎こと、佐藤健さんと同じ誕生日です
コンビニといえばローソン!ただいまローソンでバイト中だよ!

ここは全年齢対象ブログですが、実際小説などにはかなりのハイティーンネタが含まれています。地獄
だが私は反省していない。

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